補助犬と一緒に来院してください。
補助犬は、手や足が不自由な人の代わりに手足となって
日常生活をサポートする、特別な訓練を積んだ犬です。
不特定多数の人が行きかう
民間施設・公共施設・交通機関において、補助犬表示を付けている補助犬は、
補助犬使用者を助ける仕事を行うために、施設内への同伴が法律で認められています。
<補助犬は同伴OKです>
平成14年10月1日に施行された「身体障碍者補助犬法」により、
デパート・スーパー・ホテル・コンサートホール・飲食店などの民間施設や、
市役所・図書館・病院などの公共施設、
交通機関に補助犬の同伴を拒んではならないことが義務付けられています。
補助犬は専門の訓練を積んでいます。
また補助犬使用者によって確かな健康管理・衛生管理を
行うよう義務化されています。
また、ペットなど他の犬と混同しないよう補助犬であるという表示を付けています。
補助犬の種類「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」。
補助犬は「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」
といった3つの種類があり、それぞれ役割が決まっています。
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目の不自由な人を補助する「盲導犬(もうどうけん)」
胴周りに白いハーネスを
装着している補助犬を見かけたことはありませんか?それが「盲導犬」です。
盲導犬は目の不自由な人の歩行をサポートするのが仕事です。
・歩道をまっすぐに歩き、使用者の歩行をサポートする
・段差の手前で止まる
・障害物があれば避けて知らせる
・目的の場所へ案内する
盲導犬はこうしたサポートをすることができます。
目の不自由な人も一人で外を歩行することはできますが、
一人の場合は周囲の音に耳を澄ませ、
足元の感覚を頼りに状況を判断しなくてはなりません。
その点、盲導犬と一緒に行動すれば、
それらに加えて盲導犬からのサインや、
ハーネスから伝わる盲導犬の動きからも、
周囲の状況を判断することができるようになります。
信号のある交差点など複雑な場所では、
盲導犬は手前で立ち止まり、使用者の指示を待ちます。
使用者は信号の音や車の動きで判断し、盲導犬に指示を与えます。
互いにコミュニケーションを取ることで、
目の不自由な人が安全に歩行することができるのが盲導犬の大きな役割となっています。
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身体の不自由な人を補助する「介助犬」
手や足が不自由な人の手助けをするためにいるのが「介助犬」です。
介助犬は肢体不自由者の代わりに、
日常生活の中で動作の補助を行うのが仕事です。
介助犬と一緒に暮らすことで得られるのは、
こうした物理的な助けだけではありません。
使用者の精神的な支えになる・一人で外出するときの不安が軽減される・家族に安心してもらえる・ご近所との会話が増える、
といった副次的な効果も期待できます。
介助犬ができる8つの主動作
・落ちたものを拾う
・物を持ってくる
・緊急連絡手段の確保
・ドアの開閉
・衣類の脱衣の補助
・車椅子の牽引
・起立・歩行の介助
・スイッチの操作
介助犬は主にこうした動作を行うことができるよう、
特別な訓練を受けています。実際に使用者と暮らし始めると、
使用者に合わせて他にもさまざまな動作を身に付けていきます。
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耳の不自由な人を補助する「聴導犬」
耳の不自由な人の代わりに音を聞き分け、
ボディタッチなどの動作を使って使用者に知らせるのが聴導犬の主な役割です。
例えば家の中では、
玄関のチャイム・目覚まし時計・ガスコンロの消し忘れ・FAXの呼び出し音などさまざまな音を聞いて知らせ、
使用者を誘導します。
外では、順番待ちのときに名前を呼ばれるときなどに、それを知らせてくれます。
<補助犬は一年間で約1,000頭以上も活躍しています>
2019年10月における補助犬の実働頭数は、
盲導犬928頭、介助犬61頭、聴導犬67頭でした(日本補助犬協会発表)。
都道府県別に見ると、盲導犬は全国各地で実働していますが、
まだ数の少ない介助犬・聴導犬は都道府県によっては実働ゼロの地域が存在しています。
介助犬の一生を覗いてみましょう。
世界には非公認の種も含めて800もの犬種が存在していると言われていますが、
盲導犬・介助犬になる犬は、ラブラドル・レトリバーがほとんどを占めています。
少数派では、ゴールデン・レトリバーやF1(ラブラドルとゴールデンのミックス種)が含まれます。
少数派では、ゴールデン・レトリバーやF1(ラブラドルとゴールデンのミックス種)が含まれます。
聴導犬になる犬だけはラブラドル・レトリバーに限らず、
チワワやプードルなど身近にいるさまざまな犬種が活躍しています。
そんな補助犬は、どうやって誕生しているのでしょうか。
生まれから補助犬になるまでの介助犬の一生を覗いてみましょう。
<介助犬は選ばれた繁殖犬から産まれます>
介助犬になれる犬は、繁殖犬と呼ばれる父犬・母犬から産まれます。
父犬・母犬は健康や性格のチェックがあらかじめ行われていて、
介助犬の親としてふさわしい犬が選ばれた繁殖犬として認定されています。
繫殖犬は繁殖犬ボランティアの家庭で、
一般のペットと同じように家族の一員として大切に飼われています。
のんびりとした生活の中で、健康に配慮して繁殖計画を立て、
そうして出産された子犬が介助犬候補となります。
子犬は産まれてからすぐに引き離すことはなく、
繫殖犬ボランティアの家庭でそのまま2か月ほど、
母犬・兄弟姉妹たちと共に暮らします。
この期間で犬同士のコミュニケーションの取り方、犬としての振舞い方を自然と学んでいきます。
<2か月~1歳:パピーホームボランティアの家庭で過ごします>
生後2か月以降は1歳になるまでの約10か月間を
パピーホームボランティアと呼ばれているご家庭で過ごします。
ここでは人間との日常生活を通じて、
留守番の仕方やトイレのトレーニングを身に付け、
乗り物に乗る機会や家族旅行なども経験させ、
人間社会で暮らすためのマナーを学ぶ期間です。
人間と暮らすマナーを身に付ける一方、
人のことが大好きになるよう愛情たっぷりに育てることも、
パピーホームボランティアでのとても重要な要素です。
<1歳~:訓練センターに入所し、訓練が始まります>
1歳になると訓練犬として約1年間の訓練が始まります。
トレーナーと共に電車やバスに乗り、
街中でスーパーや映画館などに出かける実地的な訓練もあります。
犬にも個性があり、ひとりひとり向き不向きがあります。
この訓練ではそうした犬個人の性格を見極め、
犬がストレスを感じていないか、
負担になっていないかを察することも目的のひとつです。
もし負担を感じているようなら、
その犬を介助犬にすることはありません。
訓練の方法にも、犬への負担をなるべく掛けない努力が見られます。
犬が好きなこと、得意なことと結びつけ、
上手にできたタイミングでしっかり褒める。
人との信頼関係を築き、人と犬が一緒に作業する喜びを知ってもらう。
そうした方針で行う訓練では、
犬自身が楽しみ、自信を持って介助犬としての仕事を進んで行う姿が見受けられます。
人もまた、犬との訓練を楽しむことが大切です。
トレーニング室からはよくトレーナーの笑い声が聞こえてくるそうです。
<3か月ごとに適正評価を行います>
介助犬に向いているかどうかを判断するため、
3カ月に一度の適正評価というものが設けられています。
複数のトレーナーにより、訓練の進捗状況を確認。
音や匂いを使って刺激への反応を観察したり、
不慣れな場所での様子を確かめたりしながら、訓練犬の適性を評価します。
例えば場所が変わると不安になって鳴いてしまう、
他の犬猫を見かけると興奮して指示が聞けなくなってしまう、
そうした性格の犬は、介助犬には向いていないと判断されることが多々あります。
そうした犬たちは「キャリアチェンジ犬」として
、例えば介助犬のPR犬として活躍してもらったり、
あるいは一般家庭に引き取ってもらったり、
その後の進路についてはきちんと考えられています。
適正評価を進むにつれ、使用者候補も同時進行して行われます。
<2歳前後~:介助犬希望者と合同で訓練を行います>
はじめ、介助犬希望者は訓練センターに泊まり込みで、
犬との接し方や世話の仕方を学んでいきます。
2~3週間、トレーナーがいつでもフォローできる環境で
お互いの信頼関係を築いてもらい、その後は自宅での訓練に移ります。
こうした合同訓練は40日以上行うよう、身体障碍者補助犬法で定められています。
<認定試験と審査を合格すれば、晴れて介助犬としてスタートします>
40日以上の合同訓練を終え、厚生労働大臣指定の法人で行われる認定試験
と審査を無事にパスすることができれば、ようやく介助犬としての生活がスタートします。
生まれてからこうして約2~3年の月日を経て介助犬になれるわけですが、
こうした補助犬1頭あたりにかかる費用は約300万円になります。
繁殖犬やパピーホームのボランティアの方、
トレーナー、獣医などさまざまな方の関りがあって、補助犬活動が支えられています。
街で補助犬を見かけたら、どうすればいい?
もしあなたが街中で補助犬と歩いている人を見かけたら、
一瞬、どうすればいいか分からない!と思ってしまうかも知れませんね。
でもそんなときは、そっと見守る、ということが一番です。
補助犬は訓練を積んでいるとはいえ、生身の生き物ですから、
何があっても仕事に集中できる、というわけではありません。
特に知らない人に突然声を掛けられたり、
食べ物を見せられたりすると、気になって仕事に集中できなくなってしまいます。
補助犬と使用者が問題なく行動できているようなら、何もせずにいるのが一番大切です。
犬好きな人にありがちなことでは、
可愛いな…と思わずじーっと犬を見つめてしまう行動です。
知らない人に見つめられると犬も気になって、気が散ってしまうことがありますので注意しましょうね。
<もし使用者が困っているようなら、声を掛けてみましょう>
補助犬を連れている使用者の方が何か困っているような様子なら、
「何かありましたか?」というように声を掛けてみてください。
聴導犬を連れている耳の不自由な人なら、
声を掛けるだけでなく視界に入るところまで
行ってからポンと軽く肩を叩く、手を振るなどしましょう。
補助犬があまり浸透していない場所では、お店への入店を断られるケースもあります。
そうした場面に遭遇したら、
「法律では補助犬の同伴は認められていますよ」とお店の方に伝えてあげてください。